系長挨拶

系長 大石 和彦 系長 大石 和彦

 私たちビジネスサイエンス系は、デジタル化とボーダレス化が急速に発達したグローバル社会の核心をなすプラットフォーム戦略・データ活用戦略・先端的法規制などのビジネス上の諸課題を中心に、経営学、法学の2分野における理論的かつ実用的な教育、研究を推進する教員組織です。その主たる研究目的は、現実のビジネス社会において蓄積される実務上の知識を、先端的かつ先駆的な学術領域の知見や手法と融合し、結果として導かれる相乗効果を最大化する実践的な理論体系の構築を図ることにあります。所属教員は、主に、上記2分野に関連する高度専門職業人の養成・再教育を行う夜間開講の社会人大学院を担当し、社会人大学院生に対する講義や研究指導を通した実務へのフィードバックを行うとともに、さらなる研究の高度化を実践して参りました。

 「ビジネスサイエンス系」という名称の組織が誕生したのは、2011年9月のことですので、その時点から数えた場合、まだ10年ほどの歴史ということになります。もっとも、その時点で、教育組織としての「ビジネス科学研究科」と教員組織としての「ビジネスサイエンス系」とが分離される以前から、東京地区に活動拠点を置き、有職社会人を対象として平日夜間及び休日土曜開講に特化した同研究科を主に担当する教員グループは、同研究科に所属する形で存在し続けて参りました。すなわち、筑波大学が全国の大学に先駆け、東京キャンパスにおいて、有職社会人を対象とした「経営・政策科学研究科」を立ち上げた1989年のスタート時点では、経営システム科学専攻(博士前期課程)の1専攻のみの構成でしたが、翌1990年には同研究科に企業法学専攻攻(博士前期課程)が設置され、経営学系と法学系の2分野からなる教員組織という、現在のビジネスサイエンス系につながる原型が、この時点で形成されました。こうした経緯を踏まえていえば、ビジネスサイエンス系は、実質的には既に30年にわたる歴史を積み重ねてきたことになります。

 有職社会人に対象を特化した大学院というコンセプトは、1989年の創基当時においては文字通りパイオニアとしての異彩を放っていたことでしょうし、その後の30年も、有職社会人大学院のトップ・ランナーとして走り続けてきたということができましょう。もっとも、全国的に社会人大学院の隆盛を見た今日の視点からすれば、私たちビジネスサイエンス系には、次なる時代を見据えた将来構想がシビアに求められている状況にあるというべきでしょう。そうした将来構想を考える際、忘れてはならないのは、私たちがこれまでの歴史の中で培ってきた特色・強みをいかんなく発揮することです。そして、上記の歴史を振り返るなら、私たちビジネスサイエンス系に所属する教員が有職社会人に対象を特化した学位プログラムまたは専攻を主担当教育組織としていることが持つ意味、そして私たちが活動の拠点としている東京という場所が持つ意味が、私たちの今後の方向性を構想する際にも鍵となります。

 ビジネスサイエンス系の主たる任務は、社会人大学院との協働を通した研究の高度化です。ビジネスサイエンス系所属教員が本学東京キャンパスを活動拠点としている、まず第一の理由は、首都圏においてビジネスの最前線でリアルタイムに従事する社会人が平日夜間及び休日土曜に通学し、経営学系及び法学系分野の高度専門教育を受講できる環境を提供することです。学士課程の20歳前後の学生とは異なり、実社会における職業上の経験に裏打ちされたアクチュアルな知識や問題意識を持ってキャンパスにやってくる彼らは、教員にとって、単に教育の対象者というにとどまらず、実社会に潜在する未開拓の研究課題に気づかせてくれる存在です。こうした社会人学生を対象とした日々の教育活動は、実社会とアカデミクスの架橋としての意味を持つものであり、ビジネスサイエンス系の研究活動にとっても重要な意味を持っています。30年の歴史の中でこのキャンパスから巣立っていた修了生の中には、その後研究者への道を進んだ方も少なくありませんが、企業や官公庁で活躍を続けている方を含め、ビジネスサイエンス系教員の研究活動において修了生との連携を図ることも、これまで以上に重要になります。

 ビジネスサイエンス系は、経営学系2グループ、法学系2グループの、計4つの研究グループから成っております。経営学系2グループについては、経営システム科学研究グループは経営学のコア領域に加えて、数理領域や情報領域に関する研究も重視しつつ、これらを融合したアプローチを志向する点、国際経営プロフェッショナル研究グループは外国人教員、女性教員比率の高さなどを通じた多様性を持つ点を、それぞれ特色としており、法学系2グループについても、企業法学研究グループがビジネスに関連性の深い法分野に特化し、最先端の法的課題に取り組み得る布陣としている点に、法曹研究グループは実定法の基本分野を満遍なくカバーし、研究者のみならず現役実務家をも構成員として擁する点に、それぞれ特色があると言えます。私たちビジネスサイエンス系はこれからも、個性ある4グループの協働が生み出す起爆力を武器に、現代社会の諸課題に切り込んで参ります。